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 「イニシエーション・ラブ」乾くるみ
評価:
乾 くるみ
文藝春秋
¥ 600
(2007-04)
Amazonランキング: 2204位

僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて…。甘美で、ときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説―と思いきや、最後から二行目(絶対に先に読まないで!)で、本書は全く違った物語に変貌する。「必ず二回読みたくなる」と絶賛された傑作ミステリー。
※ネタバレ注意※
一応大丈夫だとは思うのですが、注意してください。

これは文庫出た時に評判になっていて、買ったんだけど、その後5年くらい家で積本と化していた本です。ラスト2行は先に読まないでとか言われていて、普段ネタバレ平気なので何回かオチから読みたくなったりもしたんだけど、前情報を入れてなかったし折角だからと最初からちゃんと通して読んでおー、そういう事かと納得。

これは80年代後半の設定で、代打で呼ばれた合コンでマユと出会った鈴木(たっくん)はお互いに惹かれあって付き合い始める事に。やがて大学を卒業した鈴木は仕事で東京に行く事になり、マユと遠距離恋愛をする事になる。こんな感じでよくある恋愛小説風な話です。時代設定もあるんだろうけど、私は読んでいて主人公の鈴木が割と身勝手な考え方していて、何だこの男、とか思っていたんだけど、最後まで読んだらそういう事はどうでもよくなりましたね。
必ず2回読みたくなる、とあるけど確かにその通り。最後まで読んでから改めてパラパラと読み返したら、所々の台詞とか描写にゾッとなった。意味が分かると怖いという感じ。あんまり語りすぎるとネタバレになってしまうから言えないけど、気になる人は前知識をあまり入れずに読んで欲しい。
文庫の解説は当時(80年代後半)の流行ものの解説(これもネタバレあり)だけど、これ読んでたら当時の男性の出費半端ないなーと思った。
こういう小説ならではのトリックは好きだなあ。




以下は本当に読んだ人向けの内容です。未読では読まないでください。

1回読んで、その意味が分かってからもう一回読むとマユのイメージが本当に変わりますね。最初はA面のマユがたっくんを自分の理想の男にしようとしている節があったり、所々でちょっとなんかありそうには感じていたものの普通に読んでいたのですが、その違和感が最後まで読むとあーなるほどとしっくりきた感じ。
で、読了した人は大半が女って怖いみたいな感想を持つんだろうけど、私的にはA,B面たっくんもマユもどっちもどっちだなって思いました。上でも書いたけどA面たっくんは内面を見て女性に自分を選んでもらいたいと考えていて身だしなみとかにも大して気を使っていないのに、そんな自分は合コンで初めて会ったマユにほぼ一目ぼれ状態。しかもマユではない子に好意を持たれている事にも、何でマユではないんだろうとか考えていたりして、読んでて正直良い気分しなかったんです。
B面たっくんは妙に自信満々で酒飲んだら手がつけられなくなる事もあってマユを殴った事もあるDV男みたいになっているし、静岡と東京をマユの為に行き来してたのは凄いと思うけど、それにも俺はこれだけしてやっているのに、みたいに思っていてちょっと何だかなーって思いました。

多分男性と女性でこの辺りの感想は変わりそうだなと思います。

浮気も体の関係持ったのはどっちも同じ時期でしたしね。ただマユの心情は一切描写されないので、そこを読者は自分で解釈するしかないから得体の知れない怖い女に感じるのかもしれない。私がマユで解せないのは一回堕胎したのに、初めてA面たっくんとHする時に結局避妊していない事かなあ。また妊娠したらどうする気だったのか本気で謎です。
そんでA面たっくんはマユが処女だと思っているからマユが痛がった振りしているのに気付かずに労わったりしているのが改めて読むと滑稽に見えましたね。B面たっくんが別れた後に間違えてマユに電話してしまって、マユが普通にたっくん?とか言っていたのを聞いてマユを哀れに思ってビビっているシーンも、真実を知った後に読むと哀れなのはB面たっくんだろとか思ったり。
マユがA面たっくんとHした後に大きさについて言及しているのもそこはB面たっくんに勝ったんだねとか思ってちょっと笑えました。

改めて読み返して個人的に怖かったのはマユが堕胎の事を便秘と言ってたっくんに話していた事でした。そんな風に言えるか普通!と思って本気で戦慄しましたよ。多分女の人はここ読むと怖いと思う。男性と思われる人の感想だと初めての相手はたっくんで〜とかクリスマスのホテル予約のシーンが怖いと思うみたいですねー。感じ方が違うのがやっぱり面白いな。

マユとB面たっくんの気持ちが離れたタイミングもいつなんだろうなーって考えたけどよく分からない。でもやっぱ決定的だったのは堕胎を決めた時かな。マユもたっくんに言われた時に泣いていたわけだからその時点では気持ちはまだB面にあるような気がするんですよね。

最後にA面B面の今後を考えるとまずA面は駄目になるだろうなと思いました。だってたっくん今の段階だとまだ富士通の内定蹴ってないだろうし。遠距離になったらまた同じ事が起こりますよきっと。B面もたっくんがいつか静岡に戻る時が来たらどうなるか分からないですよね。でもイニシエーション・ラブを終えた2人なら大丈夫なのかな。

最後に言いたいのは作中で一番の良い人は海藤だと思いました。

興奮冷めやらぬまま思った事書きたいままに書いてたらこんな分量に。それだけ読後に色々考える余地がある話だったという事で、とても楽しかった。時系列とか伏線の辺りは考察サイト様を読んで理解しましたが、自分でも気付かない部分がたくさんあって面白かった。

| 2013.02.11 Monday | 作家別・あ行(乾くるみ) | comments(0) | trackbacks(0) |
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