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 「横道世之介」吉田修一
評価:
吉田 修一
毎日新聞社
¥ 1,680
(2009-09-16)
Amazonランキング: 152350位

なんにもなかった。だけどなんだか楽しかった。懐かしい時間。愛しい人々。吉田修一が描く、風薫る80年代青春群像。
長崎から東京の大学へ進学した普通の青年・横道世之介の大学1年生の1年間を追った物語。地の文が世之介に対してつっこみ調だったのが読んでいて面白かった。話もごくごく普通の世之介の生活がメインなんだけど、バイトしたりサークル活動したり免許取ったりとか何気ない日常が楽しそうで私ももっと大学生の時アクティブに動けば良かったなあと思わされた。実際、大学でもそういう風にしたかったけど、何だかんだで面倒になって特定の子と遊ぶだけだったなあと自分の大学時代を思い返したりしちゃいました。
成り行きでサンバサークルに入ってしまい、ほぼユーレイ部員だった世之介が最終的にはサンバを踊る恥ずかしさを乗り越えて楽しいと思えるようになっているのが良かった。途中で未来の話が入ってきて、40歳になった世之介がどうなってしまうのかが分かるのだけど、それを知ったら余計に世之介の大学生活がキラキラして見えたなあ。世之介が平凡だから、彼の周りの人物はちょっと風変わりな人ばかりで、でもそのおかげでそれぞれのキャラが生き生きとしていてみんな好きだったな。サンバサークルの先輩の石田とマイペースお嬢様の祥子が特に好きだった。世之介と祥子がした何てことのない約束をしっかり覚えていた世之介にもグッと来たなあ。
| 2013.04.21 Sunday | 作家別・や行(吉田修一) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「最後の息子」吉田修一
評価:
吉田 修一
文藝春秋
(1999-07)
Amazonランキング: 320911位

オカマと同棲して気楽な日々を過ごす「ぼく」は、いかにして甘えを克服していったのか。圧倒的支持を得た第84回文學界新人賞受賞作
「最後の息子」「破片」「water」の3編。
息子がテーマの1冊。純文よりの作品なのもあって読みやすいけど、話の本質をきちんと理解出来た気はしなかった。純文難しいなあ。この3編だったら「water」が一番好きかな。高校3年生で、それぞれ進路が違くなっていく中、水泳部の大会に向けて練習をしていき、それが大会で報われていく。何だか最後に彼らの今後も良い方へ向かっていくんじゃないかなと思えて良かった。
| 2012.12.27 Thursday | 作家別・や行(吉田修一) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「さよなら渓谷」吉田修一
評価:
吉田 修一
新潮社
¥ 420
(2010-11)
Amazonランキング: 39992位

緑豊かな桂川渓谷で起こった、幼児殺害事件。実母の立花里美が容疑者に浮かぶや、全国の好奇の視線が、人気ない市営住宅に注がれた。そんな中、現場取材を続ける週刊誌記者の渡辺は、里美の隣家に妻とふたりで暮らす尾崎俊介が、ある重大事件に関与した事実をつかむ。そして、悲劇は新たな闇へと開かれた。呪わしい過去が結んだ男女の罪と償いを通して、極限の愛を問う渾身の長編。
幼い子供が殺されるという事件が起こり、子供の母親が逮捕される所から話が始まるが、いつの間にか話はその親子の隣人である尾崎の起こした過去のある事件へと変わっていく。尾崎は大学生の時に、所属していた野球部の仲間と一緒に、女子高校生に対するレイプ事件を起こしていた。その事実を知った記者の渡辺は尾崎の過去を探っていく。
最初は逮捕された里美と尾崎は本当に共犯なんだろうと思って読んでいたのだけど、全くそういう話ではなかった。先が気になってぐいぐい読めたなあ。
尾崎とかなこの、歪んだ感情からではあると思うけど、多分愛しあっているのに、過去の出来事からお互いに好きになってはいけない、愛されてはいけないと思ってしまっているのが何だか切ない。起こした事件が事件だけど、2人には幸せになってもらいたいなあとも思う。
記者である小林の、事件を起こした本人の前でだけでは、隠さなくてもいい、自然でいられるみたいな台詞が印象に残った。
| 2011.07.27 Wednesday | 作家別・や行(吉田修一) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「日曜日たち」吉田修一
評価:
吉田 修一
講談社
(2003-08-26)
Amazonランキング: 517565位

ありふれた「日曜日」。だが、5人の若者にとっては、特別な日曜日だった。都会の喧騒と鬱屈した毎日のなかで、疲れながら、もがきながらも生きていく男女の姿を描いた5つのストーリー。そしてそれぞれの過去をつなぐ不思議な小学生の兄弟。ふたりに秘められた真実とは。絡みあい交錯しあう、連作短編集の傑作。
「日曜日のエレベーター」「日曜日の被害者」「日曜日の新郎たち」「日曜日の運勢」「日曜日たち」

連作短編集。タイトルの日曜日ってのは、曜日の事ではなく、憂鬱な感じやふさぎこんだ感じの気分を指している。どの話にも共通して出てくるのは、九州の方の言葉を話す幼い兄弟。この2人がどうなっていくのかを追っていく短編集かな。

憂鬱の象徴であるかのような兄弟の結末が暗くはなっていないのを見ると、多分各短編に出てきた人物たちのこの先も暗くはないのだろうなあと想像出来る。私は最後の「日曜日たち」という話が一番好きだった。
| 2011.01.04 Tuesday | 作家別・や行(吉田修一) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「悪人」吉田修一
評価:
吉田 修一
朝日新聞社
¥ 1,890
(2007-04-06)
Amazonランキング: 500位

なぜ、もっと早くに出会わなかったのだろう――携帯サイトで知り合った女性を殺害した一人の男。再び彼は別の女性と共に逃避行に及ぶ。二人は互いの姿に何を見たのか? 残された家族や友人たちの思い、そして、揺れ動く二人の純愛劇。一つの事件の背景にある、様々な関係者たちの感情を静謐な筆致で描いた渾身の傑作長編。
吉田修一が犯罪小説を書いたというのは気になっていたのだけど、なかなか読む機会がなかったのですが、映画化を機に読んでみる。

すごく重厚な物語だった。冒頭に、殺人で一人の男が逮捕された事が語られていて、そこから、色んな人の視点を経て、一つの事件を追っていく構成。複数の登場人物の視点があるからこそ、この人の方がよっぽど悪人じゃないか!と思う人物が多い。一人の人間は、誰かにとっては善人であっても、別の誰かにとっては悪人にもなるのだ、そんな事を漠然と思った。

祐一と光代の逃避行は切ない。祐一はもっと早く光代と出会っていれば良かったというが、本当にその通りで、色々な物事の起こる順番が違っていたら、こんな事にはならなかったかもしれないのにと思ってしまう。最後に祐一が光代にした行動も、祐一の気持ちを考えると切ない。

殺された佳乃の父親である佳男は、大切な者がいないから、自分は失うものがないのだと何でも出来る気になっているというような台詞と、光代の大切なものが出来たから、自分は何でも出来るのだと思ったという台詞(手元に本がないので、ちょっとうろ覚え…)が、対照的だなあと思う。果たしてどちらが本当なのだろうかと考えてしまう。人によって考えは違うのだろうけど、一番印象に残るシーンだった。
| 2010.09.09 Thursday | 作家別・や行(吉田修一) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「パレード」吉田修一
評価:
吉田 修一
幻冬舎
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(2002-01)
Amazonランキング: 81926位

5人の若者の奇妙な2LDK共同生活を描いた青春小説。いつの時代も現実は厳しい。でもふさわしい自分を演じればそこは、誰もが入れる天国になる。杉本良介21歳、H大学経済学部3年。大垣内琴美23歳、無職。小窪サトル18歳、「夜のお仕事」に勤務。相馬未来24歳、イラストレーター兼雑貨屋店長。伊原直輝28歳、インディペンデントの映画配給会社勤務。5人の生活がオムニバスで綴られる。
都会で職業も性別も年齢もバラバラな5人の男女の共同生活を描いた物語。
一見そつなく共同生活をしているけれど、それぞれが心では様々な事を考え、闇のようなものも持っており、表面上のお気楽さと内面の葛藤も見所な小説なのかと思う。
語り手は、大学3年生の良介、働かずにずっと部屋にいて、若手俳優と付き合っている琴美、イラストレーターをしつつ雑貨屋の店長もやっている未来、未来が酔っ払って家に連れてきてしまってから居つくようになってしまった5人目の同居人サトル、最年長で映画配給会社に勤めている直輝という順番で変わっていく。

私、これは普通の同居している若者たちの生活を描いただけなのかと思っていたけれど、小説のラストがなんとも印象的でびっくりしました。他人と、しかも自分以外では4人もの人間と暮らしていて、仲が良いのかと思っても、実はそれは表面上だけ、というのがはっきりと示されているような気がした。彼らは他人と暮らしていても結局は自分の事しか考えておらず、自分に影響がなければ誰が何をしていようが興味がないのだろうなと感じた。難しそうな同居という事をやっていても、その心では本当に他人と分かり合おうというものがないのかもと思った。
| 2010.02.12 Friday | 作家別・や行(吉田修一) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「女たちは二度遊ぶ」吉田修一
評価:
吉田 修一
角川書店
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(2006-03-25)

本当になんにもしない女だった。炊事、洗濯、掃除はおろか、こちらが注意しないと、三日も風呂に入らないほどだった―。甘く、ときに苦く哀しい、“日本の美しい女たち”11人の物語。女の生態と男の心理をリアルに描く、著者会心のイレブン・ストーリーズ。
「どしゃぶりの女」「公衆電話の女」「自己破産の女」「殺したい女」「夢の女」「平日公休の女」「泣かない女」「最初の妻」「CMの女」「十一人目の女」「ゴシップ雑誌を読む女」

語り手の男が、自分が関わった女性について思い出しているという形式の話。殺したい、とか自己破産とか見て、どんだけひどい女の話なのかと思っていたけど、内容は普通で出てくる女性たちはどこにでもいそうなキャラクターだったし、語り手の男もそう。だからこそ印象に残るのもそんなに残らないのも様々だった。
| 2009.12.21 Monday | 作家別・や行(吉田修一) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「東京湾景」吉田修一
東京湾景 (新潮文庫)
東京湾景 (新潮文庫)
吉田 修一

「愛してないから、こんなに自由になれるの」「それでも、お前と一緒にいたかったんだよ」。品川埠頭の倉庫街で暮らし働く亮介が、携帯サイトの「涼子」と初めて出会った25歳の誕生日。嘘と隠し事で仕掛けあう互いのゲームの目論見は、突然に押し寄せた愛おしさにかき消え、二人は運命の恋に翻弄される。東京湾岸を恋人たちの聖地に変えた、最高にリアルでせつないラブストーリー。
★★★

出会い系サイトをきっかけにして出会った男と女。東京湾岸を舞台にして、海の潮の匂いがしそうなほどの恋物語でした。
いろんな男女が出てきていたけど、印象に残るのはやっぱり主人公の亮介かな…。
昔、激しいほどの恋をして、本気で好きになってもいつかは気持ちが冷めてしまう、ずっと同じ気持ちのままではいられないと思う亮介と、体と体でしか繋がれないから抱き合うのではなく、心と心で誰かと繋がりたいと思う美緒。
そんな二人の恋の結末はしっかりとは描かれない。読者の想像に委ねられていて、逆にとても気になる。

あと、小説家の青山ほたるも微妙に気になりました。何だか危ないキャラクターですよね…。心配になります。
| 2008.05.20 Tuesday | 作家別・や行(吉田修一) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「パーク・ライフ」吉田修一
パーク・ライフ
パーク・ライフ
吉田 修一

停車してしまった日比谷線の中で、間違って話しかけた見知らぬ女性。知り合いのふりをしてくれた彼女は同じ駅で降り…。東京のド真ん中「日比谷公園」を舞台に男と女の「今」をリアルに描く、第127回芥川賞受賞作。
★★★★
「パーク・ライフ」「flowers」

「パーク・ライフ」
電車の中で間違えて見知らぬ女性に話しかけてしまい、その後偶然日比谷公園再開してから、一緒にお昼をすごすようになった男女の物語。
二人はお互いの名前すら知らないけれど、そんなの分からないくらいに、昔からの知り合いのような雰囲気がある。名前なんて知らなくてもこれくらい親しくなれたらものすごくいいですね。
最後、女性は何を決めたのかが気になります。

「flowers」
飲料の補充をする会社につとめた石田が先輩の運転手・望月元旦と交流していく話。
元旦は同僚の永井さんの奥さんと浮気をしているが、さらに永井さんの奥さんを慎二さんにも紹介していたり、石田にも紹介しようとしたりするすごい奴。
それでも永井さんに飄々と接する。
タイトルが「flowers」なだけあって、花を生けるシーンがたくさんあって、元華道部としてはその辺は楽しく読めました。男性が花を生けるってなんかいいですねー。

これを読んで思ったのはどっちの話も人と人との距離感を描いたのかなあってことかな。「パーク・ライフ」ではお互いの名前も知らぬ男女の交流、とりたてて問題が無いことが逆に問題になっている夫婦。
「flowers」では、仲がよかった石田と妻の鞠子が話が進むと徐々に関係がドライになっている様子、石田と従兄の幸之介の関係、辺りかな。
| 2008.01.05 Saturday | 作家別・や行(吉田修一) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「7月24日通り」吉田修一
7月24日通り
7月24日通り
吉田 修一

普通の女には、平凡な未来しかないのかな? でも、一度くらいはドラマみたいな恋をしてみたい。間違ってもいいから、この恋を選ぶ。そう思ったこと、ありませんか? 「東京湾景」の著者がおくる長編ラブストーリー。
映画「7月24日通りのクリスマス」の原作本です。
私、映画化とかされると自分が映画を見る、見ない関係なしに原作本が読みたくなります。やっぱ原作の本があると、映画よりおもしろいんじゃないかと思うからなんですが。それで「博士の愛した数式」とか「出口のない海」(これはまだちゃんと読んでないけど)とか、あと映画じゃないけど「白夜行」なんかもそれが理由で読んだな。そこから自分がまだ読んだことない作家との出会いにもなるのでなかなかいいのです。
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| 2006.11.25 Saturday | 作家別・や行(吉田修一) | comments(0) | trackbacks(0) |
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