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 「偶然の祝福」小川洋子
評価:
小川 洋子
角川書店
¥ 500
(2004-01)
Amazonランキング: 171831位

お手伝いのキリコさんは私のなくしものを取り戻す名人だった。それも息を荒らげず、恩着せがましくもなくすっと―。伯母は、実に従順で正統的な失踪者になった。前ぶれもなく理由もなくきっぱりと―。リコーダー、万年筆、弟、伯母、そして恋人―失ったものへの愛と祈りが、哀しみを貫き、偶然の幸せを連れてきた。息子と犬のアポロと暮らす私の孤独な日々に。美しく、切なく運命のからくりが響き合う傑作連作小説。
「失踪者たちの王国」「盗作」「キリコさんの失敗」「エーデルワイス」「涙腺水晶結石症」「時計工場」「蘇生」

久々に読んだ小川洋子。独特の世界観と文章はたまに読むとすごくツボにハマるなあと思った。犬のアポロと息子と共に暮らす小説家の「私」が語り手で、かつて「私」のそばにあって、そして失われていった物事を思い出していくような形の小説。それは自分が大切にしていた万年筆やリコーダー等の物から自分の伯母さんや実の弟など人まで様々。淡々と進むけれど話の底にあるのはやっぱり喪失感や哀しみなのかなあと思う。上手く感想言えないけれど、話の感じに似あわず心地よい読後感だった。
| 2013.05.17 Friday | 作家別・あ行(小川洋子) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「密やかな結晶」小川洋子
評価:
小川 洋子
講談社
¥ 720
(1999-08-10)
Amazonランキング: 97343位

記憶狩りによって消滅が静かにすすむ島の生活。人は何をなくしたのかさえ思い出せない。何かをなくした小説ばかり書いているわたしも、言葉を、自分自身を確実に失っていった。有機物であることの人間の哀しみを澄んだまなざしで見つめ、現代の消滅、空無への願望を、美しく危険な情況の中で描く傑作長編。
次々と身の回りのものが消滅していってしまう島の物語。消滅というか、人々の記憶の中から消えていってしまうというのが正しいのかな。何だか不思議な感覚だった。例えば、「鳥」が消滅したら、鳥に関する本や物を、島の人はみんな燃やしてしまう。鳥を見てもそれが何なのか分からなくなって、いつしかその空白が当たり前になって、という感じ。
そんな中、消滅が起っても記憶が消えない人たちもいて、その人たちは秘密警察という、取り締まる機関に狙われるようになってしまう。記憶の消えない人たちをかくまうために隠れ家を用意する人も現れて、主人公の「わたし」も、ひそかな思い人であるR氏を助けるために、昔からの知り合いのおじいさんと協力してR氏を自宅の隠し部屋へかくまうようになる。この辺のモチーフは、小川さんの好きなアンネ・フランクから来てるんだろうなあと思いながら読んだ。
日々、何かが消滅していく「わたし」と、何も消滅しないR氏では、考え方も違っていってしまって、決して通じ合う事はない。そして常に失われていくしかない島の行く末も、また消滅しかないんだなあと思うと、何ともやりきれない感じがしつつ読み終わった。ちなみにおじいさんが良いキャラしてて好きだったのもあって、終盤の展開にはああ!ってなった。
| 2011.08.19 Friday | 作家別・あ行(小川洋子) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「冷めない紅茶」小川洋子
評価:
小川 洋子
福武書店
(1990-08)
Amazonランキング: 252120位

凍る愛、消え去った時間。そして、掌で確かめられるほど鮮やかな“死”の輪郭。猥雑な生を忌み、死へと傾斜してゆく時代の感性を、彫琢した文体で掬いとった第103回芥川賞候補作。
「冷めない紅茶」「ダイヴィング・プール」

小川洋子の初期の作品。静かな文章の中に残酷で少しゾッとするようなものが潜んでいるストーリーだった。久々に読むとやっぱり小川洋子の世界には引き込まれるなあと感じた。
表題作よりも「ダイヴィング・プール」の方が印象的だった。内に潜む残酷な衝動が原因で、自分が得たかったものが永遠に手に入らないと分かってしまう。ちょっと物悲しい話。
| 2011.04.15 Friday | 作家別・あ行(小川洋子) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「薬指の標本」小川洋子
評価:
小川 洋子
新潮社
¥ 380
(1997-12)

楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡……。人々が思い出の品々を持ち込む〔標本室〕で働いているわたしは、ある日標本技術士に素敵な靴をプレゼントされた。「毎日その靴をはいてほしい。とにかくずっとだ。いいね」靴はあまりにも足にぴったりで、そしてわたしは……。奇妙な、そしてあまりにもひそやかなふたりの愛。恋愛の痛みと恍惚を透明感漂う文章で描いた珠玉の二篇。
「薬指の標本」「六角形の小部屋」
小川さんらしい、不思議な世界観に満ちた話だった。
「薬指の標本」で主人公が薬指を工場で失うエピソードとか、痛さが全然感じられなくてちょっとぞっとした。足に一体化していく靴がなんとも印象的です。
「六角形の小部屋」では、この、ただ部屋に入って自分の話したいことだけを話す場所っていうのに何だか惹かれるものがありました。誰にでもこういう場所って必要なんじゃないかしら…とか思ってしまいました。 
| 2009.08.19 Wednesday | 作家別・あ行(小川洋子) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「夜明けの縁をさ迷う人々」小川洋子
夜明けの縁をさ迷う人々
夜明けの縁をさ迷う人々
小川 洋子

★★★★
「曲芸と野球」「教授宅の留守番」「イービーのかなわぬ望み」「お探しの物件」「涙売り」「パラソルチョコレート」「ラ・ヴェール嬢」「銀山の狩猟小屋」「再試合」

小川洋子の幻想的(?)と表現していいのか分からないけど、不思議世界を久しぶりに読みましたが、すんなりと入ってきてよかった。
後味はいいわけではないし、何だかざわざわとした心になるけれど、久しぶりだとそれもまたいいかなあと思えました。

以下は簡単な感想とかあらすじとか。

「曲芸と野球」
いきなり曲芸と野球という組み合わせにびっくりした。優しい少年と曲芸氏の交流が何だか和む。

「教授宅の留守番」
ちょっとホラーな物語。D子さんは普通に恐ろしいです。
しかし、この教授宅に届いたプレゼントの異常なまでの多さが非現実的で印象に残った。

「イービーのかなわぬ望み」
エレベーターボーイであるイービーの話。エレベーターの中でしか生きられなくなってしまったイービーがはたして幸せだったのかは分かりませんが、何だか悲しい話。

「お探しの物件」
人が家を求めるのではなく、家が求める人を探す不動産屋の話。
出てくる物件がどれも癖がありすぎてすごい。私だったら絶対に住みたくないわーと思った。

「涙売り」
痛い話だなあ。涙を売って生活をするっていうのが、独特だけれども、最後に主人公が起こすことがすごすぎて見ていられない気持ちになった。そこまで人のために何か出来るっていうのもすごいなあ。

「パラソルチョコレート」
この話が一番好きでした。自分の裏側を生きるおじいさんと偶然会ってしまった女の子の話。何だか二人のやりとりが微笑ましかった。
その後のかくれんぼみたいな感じも好き。
小川さんの描く少年少女が誰かと交流している話ってのは、私の好みみたいです。

「ラ・ヴェール嬢」
亡くなったラ・ヴェール嬢に形見分けとして遺品を受け取った男が、ラ・ヴェール嬢との出来事を思い出している話。

「銀山の狩猟小屋」
狩猟小屋の鍵を持っていた男が、少し不気味で印象に残った。

「再試合」
これまた不思議な話。最初の「曲芸と野球」となんか繋がっているのかなと勝手に思っていたのだけれど、全然関係ありませんでした。
| 2008.08.29 Friday | 作家別・あ行(小川洋子) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「海」小川洋子
海

小川 洋子

キリンはどんなふうにして寝るんだろう。『新潮』掲載の表題作ほか、「博士の愛した数式」の前後に書かれた、美しく奥行きの深い全7作品を収録する。この世界の素晴らしさを伝えてくれる短編集。
高校卒業前の家庭学習期間中に、情報の補講を受けたんですけど、そのついでにもう少し勉強して行こうかなと思って一回だけ図書室に行ってみました。そのときに息抜きに最初の「海」だけ読みました。あとで図書館で借りようと思ってたらこの前ようやくあったので借りてみました。引越し寸前なのに何やってんだよと思いつつしっかり読みました。

「海」
結婚の承諾をもらうため彼女の実家まで来た僕。彼女の両親との会話の気まずさを感じながら、夜、演奏家だという彼女の弟と会話を交わす。彼女と10歳違いの弟は僕よりも大きい。けど、弟と会話をしながら繊細な指使いで楽器をふく弟がイメージできそうな、そんな物語。鳴鱗琴、ぜひ聴いてみたい。

「風薫るウィーンの旅六日間」
旅行で部屋が一緒になった「私」と琴子さん。琴子さんは死にかけている昔の恋人に会うためにオーストリアへやってきた。「私」は残りの日を琴子さんと一緒に恋人のいる病院へ通う。
琴子さんのキャラが何だか可愛らしかった。最後のおちゃめでうっかりさんなところとか。

「バタフライ和文タイプ事務所」
医学部の大学院生にしか知られていないようなタイプ事務所で働く女性が主人公。
管理人さんの指使いの描写とか妙にエロチックなのが何か小川さんっぽいなと思った。何かそんなような雰囲気の話が前にもあったような気がしたんです。

「銀色のかぎ針」
電車に乗りながら思い出す自分の祖母の事。短いのに心あったまるようないい話。

「缶入りドロップ」
バスの運転手さんの子供達を喜ばせるための工夫が素敵だった。私も幼稚園のときバスで登園していてので、その頃のことをちょっと思い出した。もちろん運転手さんと喋った記憶は無いのですが、確か同級生のおじいちゃんが運転していたんだった。今でも元気なんだろうか。

「ひよこトラック」
喋らない女の子と、その子の家に下宿する男性との交流の話。だんだんと深まっていく二人の仲が心地よかった。最後のひよこだらけな風景はすごそうだ。いろんな色ってのがファンシーでかわいらしい。

「ガイド」
小さな男の子と旅行に来た「題名屋さん」のおじさんの話。これもまたいい話だった。おじさんの「詩など必要としない人は大勢いるが、思い出を持たない人間はいない」というセリフが好き。「明日の記憶」を読んだばっかだからなのかひびいてきた。そして、この話のラストもいいなあ。お母さん、きっと喜びますね。
| 2007.03.29 Thursday | 作家別・あ行(小川洋子) | comments(2) | trackbacks(2) |
 「妊娠カレンダー」小川洋子
妊娠カレンダー
妊娠カレンダー
小川 洋子

出産を控えた姉に毒薬の染まったジャムを食べさせる妹…。妊娠をきっかけとした心理と生理のゆらぎを描く芥川賞受賞作「妊娠カレンダー」。謎に包まれた寂しい学生寮の物語「ドミトリイ」、小学校の給食室に魅せられた男の告白「夕暮れの給食室と雨のプール」。透きとおった悪夢のようにあざやかな三篇の小説。

「妊娠カレンダー」「ドミトリイ」「夕暮れの給食室と雨のプール」

妊娠した姉に、染色体を壊す作用がある薬がついたグレープフルーツのジャムを作って食べさせる妹の話「妊娠カレンダー」、さびれた学生寮に通う主人公と管理人の話「ドミトリイ」、給食室を見つめる親子の話「夕暮れの給食室と雨のプール」の3篇。

どの話も読んでてなんとなくぞっとする。
妊娠カレンダーは妊婦の人は読まないほうがいいだろうなあ。嫌悪感持ちそうだ。
ただ、これ読んで妊婦の女の人のお腹の中にもう一人ひとが入っているという、その不思議な違和感みたいな感じ、なんとなくわかる。

「ドミトリイ」は読んでてホラーかと思った。読み終わった後も、つい深読みしてしまう。このさびれた学生寮の閉塞感みたいなのをすごい感じた。

「夕暮れの給食室と雨のプール」は、私小学校でも中学校でも給食委員なんかやってたんですけど、そのときのことを思い出しました。学校で給食作ってるところって実際にあるんですかね。私のとこは町の給食センターで町内の小・中学校の給食はまとめて作っていたので、小学校の給食室でエビフライを作る過程を見たとかそんなことはなかったですね。そもそも中学校には給食室なんてなかったし。
でも、小学校の給食室のあの広くて、ガランとした独特の雰囲気は何となく覚えてる。あそこは一人でいたら怖そうだ。
| 2006.09.03 Sunday | 作家別・あ行(小川洋子) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「沈黙博物館」小川洋子
沈黙博物館
沈黙博物館
小川 洋子

耳縮小用メス、シロイワバイソンの毛皮、年増の娼婦の避妊リング、死者の分身ともいえる形見が盗まれ集められる。なぜ? その物語とは? 追いつめられた博物館技師の運命は?

読むのに1週間ぐらいかかっちゃいました。何だろう、この不思議な世界観にうまくなじめなかった。

博物館を作るために村を訪れた博物館技師は死んだ人の形見を飾る博物館を作り始める。技師を雇ったのは年老いた老婆で、技師は博物館を作りながら老婆の代わりに死んだ人の形見を集め始める。っていう話。

死んだ人の形見を集めながらだんだん技師はこの不思議な村に取り込まれている印象を受ける。事件も何も起こらないような村だったのに、技師が形見を集め始めたら爆弾事件や殺人事件が起こりだす。といっても、その事件を解決していく話ではない。で、その事件も一応は誰が起こしたんだっていうのはわかるんだけど、詳しいことは書かれないし、技師はそれを警察に話そうとかは全然思っていない。
技師が兄にあてた届かない手紙は解釈の仕方が人によって違うかもしれない。私もどう取っていいものかわかんない。兄はもういないのか、それともこの村が現実とは違った次元にあるのか。ただ読解力が無いだけなのかもしれないけど。
| 2006.04.16 Sunday | 作家別・あ行(小川洋子) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「刺繍する少女」小川洋子
刺繍する少女
刺繍する少女
小川 洋子

博士の愛した数式で暖かい話を書いていたのにこの話はだいぶ違っててものすごいギャップを感じた。というか、博士の愛した数式のほうが特殊だったみたいですね。他の作品読んでないからあれですけど・・。たぶん違うのもまだまだ読むと思います。

解説なんかで残酷な物語とあって、ほんとそんな感じだなあという感想です。残酷とまでいかなくても後味の悪い話がほとんどだったような気がする。短編だから話の世界に入り込めないまま終わってしまうのが多くてちょっと物足りなさを感じました。
| 2006.01.08 Sunday | 作家別・あ行(小川洋子) | comments(0) | trackbacks(0) |
 「博士の愛した数式」小川洋子
博士の愛した数式
博士の愛した数式
小川 洋子

80分しか記憶が持たない博士と、博士の世話をする家政婦である私とその息子のルートとの暖かい交流を描いた話。
私はこういう話にとても弱いので最後のほうは少し泣きながら読んでました。所々に数字の話とかがあって、それを読むと数学も面白いものなんだなあと少し思った。対数とか最近授業で習ったのでなんか面白かった。
それからルートがものすごくいい子だなあと思った。10歳かそこらだと、博士のような人を偏見の目で見そうだけどルートは全然そうでは無い。博士とは同じ目線で接していてとても優しい子だなあと感じる。
| 2005.12.20 Tuesday | 作家別・あ行(小川洋子) | comments(2) | trackbacks(3) |